子宮内膜症の診断と治療/ DiagTreatOfEndm

子宮内膜症の診断

通常、生理痛の症状を詳しく聞くことにより(問診)、子宮内膜症かどうかおおよそ見当がつきます。
さらに診断を確定するには内診にて子宮、骨盤の状態をチェックすることで可能となります。
子宮内膜症がある部分は痛みのあるしこり(硬結)になっています。
その他、卵巣内に発生した子宮内膜症は卵巣の中に血液のかたまりができる(チョコレートのう胞)ため超音波で簡単に診断が可能です。
子宮内膜症が進行している場合にはCA125という腫瘍マーカーが上昇しますので診断の参考になります。
しかし子宮内膜症が初期の段階や骨盤腹膜、直腸前面などに平面的に拡がっている場合は先に述べた診断法では診断が困難です。
このような場合は腹腔鏡という内視鏡で骨盤内を直接見て診断することが通常よく行われます。

内膜症の診断

・問診
・内診
・超音波

・腫瘍マーカーCA125
・腹腔鏡

子宮内膜症の治療

子宮内膜症は月経痛などの原因とともに不妊症の原因にもなります。
月経痛に対応した治療法と不妊症治療とは治療法が異なりますので、この項では月経痛を伴う内膜症に限定して述べます。

不妊症+内膜症は不妊の治療の項を参照してください。

鎮痛剤

鎮痛剤、いわゆる痛み止めですが、これにはいろいろな種類がありますが、内膜症には非ステロイド性鎮痛剤(non steroidal anti-inflammatory drugs)NSAIDsが挙げられます。

鎮痛剤

・イブプロフェン
・ロキソニン

・ボルタレン
・インダシン

低用量ピル(低用量エストロゲン(E)・プロゲスチン(P)配合剤 E/P配合剤)

子宮内膜症患者の20%は鎮痛剤を服用しても痛みをコントロールできないといわれています。
このような例では卵巣ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン作用のあるプロゲスチンの両方を含んだ低用量ピル(E・P配合剤)を用います。
E・P配合剤は排卵をストップし卵巣からのホルモン分泌をおさえます。
その結果、E・P配合剤は生理痛を軽減させるばかりでなく月経血量を減らし、また内膜症の進行を予防する効果も確認されています。

低用量E・P配合剤(低用量ピル)

・ルナベル

・ヤーズ

・その他の低用量ピル(マーベロン・オーソM21、トリキエラー、アンジュなど)

合成黄体ホルモン(プロゲスチン)の一つジェノゲスト

排卵した後卵巣から分泌される女性ホルモンの一つが黄体ホルモン(プロゲステロン)ですが、これと同じような作用をもち人工的に合成されたホルモンをプロゲスチンと呼びます。
このプロゲスチンの一つであるジェノゲストが有効であることが確認されています。
低用量ピルで痛みのコントロールできない人などが対象となります。
低用量ピルが使用しにくい40歳代の女性にはうってつけです。

合成黄体ホルモン(プロゲスチン)

・ジェノゲスト

Gn-RHアゴニスト

脳の内の視床下部という場所から脳下垂体を刺激する性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Gn-RH)が分泌され、このホルモンが脳下垂体を刺激し、その作用で性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)を分泌し卵巣を刺激し排卵をうながします。
排卵がおこると卵巣から卵胞ホルモンが分泌され子宮内膜と子宮内膜症を刺激します。
Gn-RHアゴニストはGn-RH分泌を抑制し、その結果、性腺刺激ホルモンの分泌も抑制します。

以上のような過程で卵巣はゴナドトロピンの刺激を失うため卵巣の活動が一時的に停止し、その結果卵胞ホルモンの分泌が低下します。
すると内膜症も刺激されないのでやがて萎縮します。
これがGn-RHアゴニストの作用機序です。
この方法は約6ヶ月間継続できます。
この間、原則的には無月経となります。
いろいろな薬物療法の中で一番強力な方法ですが、卵胞ホルモンの低下によりノボセなどの多少の副作用が出ることもあります。

Gn-RHアゴニスト

・リュープリン(注射、点鼻)
・ブセレリン(注射、点鼻)
・ゴセレリン(注射)

手術療法

薬物療法で充分な治療効果が得られない場合や、卵巣にできた内膜症(内膜症性卵巣のう腫、チョコレートのう胞)が40~50mm以上と大きい場合などは手術療法の対象となります。
通常、腹腔鏡という内視鏡を使い骨盤内の内膜症を焼いたり(焼灼)、チョコレートのう胞をとり除いたり卵巣内の血液を吸引したりします。
手術療法は内膜症に有効な方法の一つですが、通常内膜症が進行している患者様や、不妊症を伴う患者様に行われます。

Check

子宮内膜症の治療法

薬物療法
  • 鎮痛剤(NSAIDs)
  • 低用量E・P剤(低用量ピル)
  • 黄体ホルモン(ディナゲスト)
  • Gn-RHアゴニスト
手術療法
  • 腹腔下内視鏡焼灼
  • チョコレートのう腫核手術

子宮内膜症に対する治療法の選択

子宮内膜症の治療法には鎮痛剤からホルモン治療、手術療法と多岐にわたります。
どの方法を選択するかとても重要です。
患者様の年齢、未婚か既婚か、妊娠を希望しているか否か、進行した内膜症かなどでその人に一番マッチしたと思われる治療法を選択します。
この項では不妊症で妊娠を希望している人を除外し、おおよその治療指針を示します。
※これはあくまでも大まかな指針です。
子宮内膜症は治療を行っても根治するものではないので、治療を中止すると再発することも多いのです。
従って、これらの治療を上手に組み合わせて患者様に一番合った治療法を見出すのがコツです。

初期例

第1選択法
・鎮痛剤(NSAIDs)→・低用量ピル
第2選択法
・低用量ピル →・ディナゲスト

中間期例

第1選択法
・低用量ピル →・ディナゲスト
第2選択法
・Gn-RHアナログ

進行例

第1選択法
・ディナゲスト →・Gn-RHアナログ
第2選択法
・Gn-RHアナログ →・手術