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- 更年期障害とは
更年期とは女性が生殖期(妊娠可能な時期)から非生殖期(妊娠が不可能な時期)へと移行する時期、つまり移行期のことです。
日本では閉経の前後5年の期間、すなわち概ね10年間を更年期と定義されています。
日本人の平均閉経年齢は49.5±3.5歳ですから更年期とはおおむね45歳から55歳の間と考えてよいでしょう。
- 身体的変調
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更年期以前、すなわち生殖期では卵巣が活動し排卵を起こすことにより、妊娠可能な状態を保っています。
しかし加齢に伴い卵巣機能が低下すると排卵が停止し卵巣からの女性ホルモン、特に卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が著しく低下します。
その結果、月経が停止し閉経をむかえます。
このエストロゲンの欠乏が様々な身体的、精神的症状を引き起こします。上記図1に示すように、まず卵巣機能が低下し定期的に排卵がおこらないため、月経周期の異常が起こります。
さらに卵巣機能が低下ないし停止すると閉経になり、エストロゲン分泌も低下するため、ホルモン欠落症状があらわれます。 すなわちのぼせ(ホットフラッシュ)、異常な発汗、めまいなどです。
- 精神的変調
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更年期の頃は本人をとりまく様々な社会的あるいは家庭内の変化が生じる時期でもあります。 老いの自覚あるいは予感、子供の自立による母親としての役割の喪失(空の巣)、親の介護などの様々なストレスが生じる時期でもあります。 また近親者の不幸、夫との死別、病気なども起こる時期でもあります。
このような喪失あるいは否定的な感情は抑うつ症状と関連します。
しかし更年期に起こる変化は決してネガティブなものばかりではありません。
多くの女性が閉経や空の巣といったストレスから解放されたとポジティブに感じる側面もあります。
また、更年期が単にストレスの強い年代であるだけでなく、アイデンティティのあり方を問われる重要な時期でもあります。
(更年期医療ガイドブック:日本更年期医学界編、全原出版,2008より引用)
「更年期に現れる多種多様な症状の中で、器質的変化に起因しない症状を更年期症状とよび、これらの症状の中で日常生活に支障を来す病態が更年期障害」と定義されています。
- 血管運動神経症状(エストロゲン欠落症状)
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- 顔のほてり、のぼせ(hot flash)
- 異常発汗(暑くないのに一人汗をかいている)
- 動悸(急にどきどきする)
- めまい
- 精神神経症状
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- 情緒不安(気持が高揚したり、落ち込んだりする)
- いらいら(ちょっとしたことでイライラする)
- 抑うつ気分(何となく気分が落ち込む、めいる)
- 不安感(大きな不安材料がないのに何となく不安)
- その他の症状
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- 腰痛、関節痛などの運動器症状(もちろんリウマチや椎間板ヘルニアなどの病気がなく)
- 吐気、食欲不振などの消化器症状
- 乾燥感、かゆみなどの皮膚粘膜症状
- 排尿障害、性交痛などの性交障害、外陰部違和感、外陰部乾燥感(dry vagina)
などの泌尿生殖器症状
なお、日本人には肩こりや易疲労感、頭痛、のぼせ、腰痛、発汗などが多い症状です。
あまり他人に相談できない上にどこに受診してよいかわからずに、ひそかに性交痛で悩んでいる方も増えています。
性交痛のために性生活が苦痛であったり、夫婦関係に支障があるような方はぜひ相談してください。
解決へと導きます。
症状の評価には日本人女性に向いた評価表(表1)に沿って行います。表1
症状 症状の程度 強 弱 無 1. 顔や上半身がほてる(熱くなる) 2. 汗をかきやすい 3. 夜なかなか寝付かれない 4. 夜眠っても目をさましやすい 5. 興奮しやすくイライラすることが多い 6. いつも不安感がある 7. ささいなことが気になる 8. くよくよし、ゆううつなことが多い 9. 無気力で、疲れやすい 10. 目が疲れる 11. ものごとが覚えにくかったり、物忘れが多い 12. めまいがある 13. 胸がどきどきする 14. 胸がしめつけられる 15. 頭が重かったり、頭痛がよくする 16. 肩や首がこる 17. 背中や腰が痛む 18. 手足の節々(関節)の痛みがある 19. 腰や手足が冷える 20. 手足(指)がしびれる 21. 最近、音に敏感である 日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会:
日本人女性の更年期症状評価表日産婦誌 2001:53(5); 883-888(111) より引用