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卵子凍結(未受精卵子の凍結保存)について

こんにちは、楠原ウィメンズクリニックの培養室です。

近年、需要が増している「卵子凍結(未受精卵凍結)」についてお話していきたいと思います。

まず、卵子凍結とは卵と精子の受精を行う前の卵のみを凍結することを指し、大きく分けて「医学的適応」と「社会的適応」により実施されます。

●医学的適応…癌など悪性腫瘍に罹患した方が、化学療法などの治療により卵巣機能が低下してしまう前に妊孕性温存のため凍結を行うこと。

●社会的適応…妊孕性が高い若いうちに、将来に備えて凍結を行うこと。


当院では「社会的適応」での卵子凍結も行っております。


では、どのタイミングで卵子凍結を行えば良いのでしょうか。

2004年に発表された文献によると、
不妊と診断された患者さんに限定せず自然妊娠で妊活を始めて、1年以内に妊娠する確率は

30歳で75%
35歳で66%
40歳で44% でした。

30歳から35歳にかけて徐々に妊孕性が下がり、35歳から40歳にかけて更に減少すると示されています。ART(生殖補助医療)を行ったとしてもわずかにしか妊娠率は上がりません。(引用文献1)


また、図に示すように体外受精を行った場合、子供1人を授かる確率は

35歳以下で90%
39歳で75%
42歳で50%

と示されていす(自然妊娠の場合は32歳以下で90%、37歳で75%、41歳で50%)。


子供2人を授かる確率は

31歳以下で90%
35歳で75%
39歳で50%

となります。
(自然妊娠の場合は27歳以下で90%、34歳で75%、38歳で50%)。(引用文献2)


つまり、36歳までにある程度の卵を凍結すれば子供1人は妊娠できるということです。


2019年日本においての、体外受精の生産率は全年齢平均で採卵あたり5.4%のため、卵が約20個あれば子供1人出産できるということになります(日本産婦人科学会、ARTデータブック)。


女性はキャリア、結婚、出産とライフステージが重なり、どちらを優先するか迷う時があります。その際の一つの手段として卵子凍結を検討されてみてはいかがでしょうか。



当院では2021年1月より卵子凍結の受付を開始いたしました。
お気軽にご相談ください。

卵子凍結(未受精卵子の凍結保存)についての概要・費用
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1) Henri Leridon. Human Reproduction Vol.19, No.7, pp. 1548±1553, 2004.
2) J. Dik F. Habbema et al. Human Reproduction, Vol.30, No.9, pp. 2215 –2221, 2015.