1.排卵痛と子宮内膜症
排卵の日、あるいはその前後1~2日間、腹痛がおこることがあります。これを排卵痛とよびます。排卵痛はポピュラーな症状です。しかし、子宮内膜症がある方はこの排卵痛の程度が強い事が特徴です。鎮痛剤が必要な人も少なくありません。このように強い排卵痛があれば子宮内膜症を疑いましょう。
しかし、排卵痛がないからといって内膜症がないとはいえません。強い排卵痛がある方はやりすごさないで専門医を受診しましょう。
2.月経痛(いわゆる生理痛)と子宮内膜症
子宮内膜症には比較的強い生理痛があります。月経痛は年齢が20代の後半とやや遅れてはじまり、年とともに痛みが強くなることが特徴です。また、この月経痛はかなり強くピルや鎮痛剤だけではコントロールできない方もいます。
以上のように20代になって月経痛が始まり、年とともに痛みが強くなるような方は子宮内膜症が疑われます。専門医を受診しましょう。
出典:The CIBA collection of medical illustrations vol.2 Reproductive system.
P.195 FRANK H.NETTEER.MD より引用
3.月経痛以外の下腹部痛と子宮内膜症
子宮内膜症では排卵痛や月経痛のほかに月経前にも持続的に下腹部痛を感じることがよくあります。内科を受診し、特に消化器に異常を認めないような場合は子宮内膜症を疑いましょう。
4.性交痛と子宮内膜症
子宮内膜症が子宮後方~直腸前面のダグラス窩という部分に発生すると性交痛がおきます。この痛みは特に腟の奥の方が痛いという特徴があります。また、痛い体位と痛くない体位があるのも一つの特徴といえるかもしれません。
しかし、性交痛がないからといって子宮内膜症ではないといえません。
5.生理期間中の下痢や軟便、時に排便痛と子宮内膜症
子宮内膜症では生理期間中に下痢あるいは軟便になることがあります。普段、便秘がちの人がこの時だけ下痢っぽくなる場合は子宮内膜症を疑って下さい。ひどくなると排便痛も伴います。
6.過多月経と子宮内膜症
経血量が多い過多月経(凝血を伴なう)は子宮内膜症によくみられる症状です。子宮内膜症以外でもよくある症状ですので子宮内膜症に特徴的なものではありませんが、一応参考になる症状です。
7.不妊症と子宮内膜症
子宮内膜症がある方の50%前後が不妊症になるといわれています。また、不妊症患者様の約20%位が内膜症を合併しているといわれています。このように子宮内膜症はかなりポピュラーで重要な不妊原因の一つです。
症状 | その特徴 |
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1.排卵痛 | ・かなり痛く鎮痛剤が必要なこともよくある |
2.月経痛 (生理痛) |
・年とともに痛みが強くなる |
3.下腹部痛 | ・月経前になると持続する下腹部痛 |
4.性交痛 | ・腟の奥の方が痛い、痛い体位がある |
5.月経期間中の下痢 軟便 排便痛 |
・普段、便秘気味なのに月経中は お通じが良くなる 下痢っぽくなる |
6.月経量が多い (過多月経) |
・固まり(凝血)を伴なう貧血がある |
7.不妊症 | ・子宮内膜症の50%は不妊症といわれている |
上記症状に3つ以上当てはまる場合には、受診しましょう!!
近年、若い女性を中心に増えている婦人科の病気に子宮内膜症があります。
子宮内膜症は強い生理痛や不妊の原因となる病気です。
子宮は子宮筋という筋肉とその内側を裏打ちするようにある子宮内膜とで成り立っております。
子宮内膜は妊娠がおこる場所で、妊娠がおこらないとはがれて月経として子宮の外に排出されます。
このように子宮内膜は通常妊娠成立のために子宮の内腔にのみあるわけですが、内膜が子宮以外の場所に飛び火のように広がりそこで内膜が増殖するのが子宮内膜症endometriosisという病気です。
主に骨盤の中の臓器に広がります。例えば卵巣、卵管、子宮と直腸の間のダグラス窩という部分、直腸前面、直腸と腟の間などです。
その他、時に膀胱や肺などかなり離れた場所にも発生するとの報告もあります。
- 1.卵巣の内側、表面
- 2.子宮と直腸の間のダグラス窩と呼ばれる部分
- 3.子宮の筋肉の間(これは特に腺筋症とよばれます)
- 4.卵巣その他、子宮や直腸表面の腹膜など
子宮内膜症の発生原因はまだはっきりわかっておりません。
しかし有力な2つの仮説があります。
1つはSampsonという人が提唱したもので、月経時に卵管を逆流した月経血が骨盤内に着床(くっつく)するというものです(子宮内膜播種着床説)。
もう一つはMeyerが提唱したもので腹膜の体腔上皮化生説というものです。
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月経痛(いわゆる生理痛)
- ・年々増強する生理痛
- ・日常生活に支障がある程の強い生理痛
- ・生理が始まる4~5日前から腹痛がはじまる
- ・市販の鎮痛剤でも痛みがおさまらない
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生理痛以外の痛み
- ・排卵の頃に腹痛がある
- ・生理の始まる4~5日前から腹痛がある
- ・排便痛(排便の時腹痛や肛門痛がある)
- ・性交痛(性交時に腟の奥や、肛門周囲に不快感や痛みを感じる)
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その他の症状
- ・生理中に下痢になるあるいは日頃の便秘が解消する
- ・月経血の量が比較的多い(凝血が出る)
- ・妊娠しにくい(不妊症の原因となる)
<まとめ:子宮内膜症の症状>
- ・強い生理痛
- ・年々増強する生理痛
- ・生理の始まる前から腹痛
- ・性交痛
- ・排便痛
- ・排卵期痛
先に述べたいろいろな症状が一人の方に全ておこるわけではありません。
その中で比較的頻度が高い症状は年々増強する強い生理痛、生理がはじまる前から腹痛がはじまる、あるいは排卵の頃腹痛があるなどが挙げられます。
ですから日常の生活に支障をきたす程、生理痛が強ければ単なる生理痛と自己判断しないで産婦人科医を受診することをお勧めします。