卵細胞質内精子注入法(ICSI)
体外受精と顕微授精法と胚の培養
細胞質内精子注入法(ICSI,顕微授精)一方、精子が少ないか運動率が悪いために強制的に精子を1個卵の中に直接注入する方法が卵細胞質内精子注入法(ICSI、いわゆる顕微授精)です。
順調に受精した卵(胚)は図9に示すように標準的には17時間後に前核期、2日目には4細胞、3日目には8細胞、4日目には柔実胚、5日目には胚盤胞に発育します。
通常3日目の胚、あるいは5日目の胚盤胞を凍結し胚移植に備えます。
胚、胚盤胞の評価
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初期胚の評価
3日目には胚は通常6~9細胞に分裂します。通常その数(割球)が多い方が良好胚です。
またその大きさが均一であるか、不均一であるかも重要です。均一なものほど良好胚です。
さらに細胞のちぎれたものフラグメント(fragment)の有無でも判定します。フラグメントのない方が良好胚です。
これらを総合的に評価したものが図10に示したVeeckの分類です。
良好な方からG1(最良好胚)>G2(良好胚)>G3(普通胚)>G4(不良胚)>G5(移植不能胚)と評価されます。
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胚盤胞の評価
3日目に6~9細胞、4日目にさらに分裂を加速させた胚は5日目には胚の内側に塊で存在する内細胞塊(ICM)と、胚をとりまく殻(透明帯)の内側を裏うちするように分布する栄養外胚葉(TE)に分化します。
ICMはいずれ胎児、TEは胎盤になる原基です。その間にできた腔を胞胚腔と呼びます。
①ステージ分類(図11-下)
胞胚腔の拡張の程度により、初期胚盤胞(ステージ1,2)、胚盤胞(ステージ3)、拡張胚盤胞(ステージ4)、脱出胚盤胞(ステージ5)、完全脱出胚盤胞(ステージ6)と分類されます。
ステージが進む程良好ですが、ステージ3の胚盤胞になればほぼ充分です。
②ICMとTEの数の多さから評価(図11-上右)
ICM、TEとも細胞が密で細胞数が多いものがA、細胞数が中等度をB、細胞数が非常に少ないものをCと判定します。
例えば、AAはICMもTEも数が多いこと、ACはICMが多く、TEが少ないことを表しています。このうちAとBからできている胚(AA、AB、BA、BB)とCBが良好胚盤胞で妊娠の可能性が高い胚です。
しかし、年齢が若ければACやBCの胚でも妊娠のチャンスは充分あります。
図11上左に示した4ABとはステージ4、つまり拡張胚盤胞でICMがA(密で数が多い)で、TEがB(細胞数が中等度にある)ということを示しており良好胚盤胞です。